これを読めば、ゼロから立派なキャバクラ黒服(ボーイ)になれる!
リアルな黒服経験者の声をもとにした黒服デビューストーリー『黒服の翔(カケル)』
大学を中退してずるずるとフリーターを続けている鈴木 翔(21)が主人公。
翔の物語を応援してくださいね!
夜勤明けの身体をひきずって玄関を開けて、ホコリがついたバイト用のジャージを洗濯機に放り込む。
溜まってきた洗濯物の山を見て、ため息が出た。
翔(カケル):「はぁ〜」
雨は嫌いだ。
バイト先の倉庫は湿度が高いとカビ臭くなるし、洗濯物は干せないし。
廊下のトタン屋根に雨が当たる音がうるさいし。
……これは、俺がボロアパートにしか住めないのが悪いんだけど。
テレビをつけたら、若い女の振り袖姿を女子アナが褒めていた。
またひとつため息をついて、適当なバラエティ番組の再放送にチャンネルを変える。
今日は成人式。
俺は去年、地元の成人式に行かなかった。いや、行けなかった。
大学を留年した末に中退し、本屋のバイトすらクビになって、派遣でピッキングの毎日。
そんな俺が着慣れないスーツ姿で、学も職もないのに成人式に出たところで何になる?
「あいつ留年しまくって結局中退したんだって」「高校でも陰キャだったよな」
そう同級生に馬鹿にされるのが怖くて、結局出られなかったんだ。
毎日スーツで会社に出て、昇進を重ねていた父さんのすごさが、今になってわかる。
父さん。俺はいま夜勤の派遣で食いつないでます。
アパートの床で転がってスマホゲームばかりしてます。
少ない給料は飯とガチャにしか使ってません。
父さんに誇れない毎日で、ごめん。
ああ、雨の日って鬱になるな。
苦い思い出を振り返っているうちに、気付けばバラエティ番組は次のコーナーに移っていた。
特集されているのは……『がっつり稼げる夜のお仕事』?
翔:(どうせこんなの、生まれつき可愛くて稼ぎまくりのキャバ嬢とかだろ?女ってだけで人生イージーモードじゃん。俺とは別世界だよ)
と思いつつ、キャバ嬢のおっぱいが映ることにちょっと期待して、番組を観続ける。
予想通りカメラが向かったのはギラギラの歌舞伎町。人気のキャバクラ店だ。
だけど、テレビの真ん中に映っているのはキャバ嬢じゃない。
シワひとつない黒スーツ姿で眼鏡をかけた、二十代後半くらいの男だ。
男は、来店した客の脱いだ高級そうなコートを預かっている。
姿勢よく店内を歩き回って、ウエイターたちにテキパキと指示を出している。
帰る客からブラックカードを受け取り、ものすごい額の会計を手際よく終える。
裏では酔ったキャバ嬢に優しく水を渡し、うっとりした目で見つめられる。
きらびやかな内装に眼鏡が反射して、表情はあまり見えないけど。
『こちらは歌舞伎町のカリスマ黒服と呼ばれる会田さんです。見ての通りお若いのに、三桁万台もの月収を稼いでいるそうですね!』
レポーターにカリスマと紹介された眼鏡の男は、取材カメラの前でクールに微笑みながら、ネクタイの結び目を整えている。
気付けば俺は、テレビに釘付けになっていた。
黒服ってなんなんだ?
男もキャバクラで働けるのか?
歌舞伎町なんて行ったことないから、なにもわからない。
わからないけど。
翔:「歌舞伎町の、カリスマ黒服……」
綺麗なキャバ嬢たちに囲まれるその人は、すごくかっこよく見えたんだ。
黒服(ボーイ)とは、キャバクラなどの水商売で働くウエイター業のことを言います。
とはいえ、黒服の仕事内容はお酒を運ぶだけではありません。
お客様のご案内やお会計をしたり、キャバ嬢の管理やお世話もする職業です。
主役であるキャストのサポートをする、繁華街の「縁の下の力持ち」役ですね!
スーツをビシッと着こなしてVIPの相手をすることもある黒服は、
豊かな経験を積めるうえ、若くして高額なお給料を稼げるという魅力があります!
退屈な毎日を送っていた翔は、黒服の仕事に興味を持つ。
どうやったら黒服になれるんだろう……?
この記事シリーズは取材をもとにしたフィクションです。
実在の人物・店舗・団体等とは一切関係ありません。